グリーンランドなどの北極圏を覆っている氷床が、温暖化の影響で溶け始めて、海面の上昇を引き起こしていることはつとに知られている。ミクロネシアの島々などで、海岸線が浸食されている映像をしばしば見るようにもなった。
私が暮らしている鎌倉、由比ヶ浜の浜辺も、幼少年時代と比べると海岸線が浸食されて大きく後退してしまっている。市当局は、夏休みシーズン前に、北陸地方の海岸からトラックを使って海砂を大量に運び込んで、それこそ埋め合わせをしているようだ。隣の逗子海岸も同様に、相模川上流の川砂を運び込んでいるという。
国連がSDGsを標榜してから久しいが、その教理が浸透するよりも、遙かに速いスピードで環境負荷や温暖化、資源枯渇が生起しているのが現実である。あらゆるモノの製造プロセスで、水や木材、石油などの資源の大幅な使用制限、環境負荷の狭小化を思い切って促進していかない限り、我々の未来は期待値とはほど遠い所に帰結してしまうのだろう。
ほぼ10年前になるだろうか、旧知の笹木隆之氏が電通を辞してTBM社に新たな仕事の場を得たことを伺った。彼が熱く語るには、『地球上に豊富に存在し枯渇リスクの少ない石灰石を原材料にして、プラスティックや紙の代替えとなるLIMEXは、資源枯渇や環境負荷を生起させない画期的な新素材であること。そしてこの製品を開発した山﨑敦義氏のリーダーシップに人生を奉じたい』、というものだった。
世に新製品や新素材は数多あるが、我々の日常に不可欠なプラスティックや紙に代わる新素材、LIMEXは耐水性、耐久性に富み、製造過程の水の使用量も、紙製品と比すと98%削減でき、しかも使用済みの製品の再ペレット化も容易だという。それはプラスティックや紙の代替製品を遙かに超えた、地球に最も優しい新製品に違いない。
世界から注目を集めているこの新素材は、現位置に留まらず、さらなる高み、即ち日本が世界に誇る「高度な知財」のポジショニングを得ていくと思われる。私はこの素材の限りない汎用性、市場性と将来性に胸をときめかせている一人である。